エアー漏れによるCO₂排出と最新可視化カメラ

はじめに：

工場のエアー漏れはCO₂の排出量増加につながる重要な要因である。日本の総電力の内、約40%は製造業で消費されており、その内の約30%がコンプレッサーの稼働で消費されていると言われている。工場の平均値として、コンプレッサーの消費電力に占めるエアー漏れによるロスは約20%ほどであり、日本の総電力の約2～3%がエアー漏れによって無駄に消費されている計算になる。そのため、エアー漏れの早期発見と対策がカーボンニュートラルや電力逼迫の課題を解決するための、最重要事項の一つと言っても過言ではないだろう。本稿では、工場のエアー漏れによるCO₂の排出と、エアー漏れをリアルタイムに可視化するためのビームフォーミング技術について詳しく説明する。

1. 工場のエアー漏れとCO₂排出：

工場では、製造プロセスやエネルギー生産に伴い、多くのガスが使用される。しかし、老朽化した設備やパイプライン、メンテナンス不備、事故などにより、これらのガスが漏れ出すことがある。様々なガス漏れの中でも、エアー漏れは人体に悪影響を与えるものではない。漏れによって圧損が発生したとしても、供給圧力の設定を上げることにより解決できるため、設備の老朽化によるエアー漏れはほとんどの工場で発生しているが、優先すべき課題として取り扱われることが多くはなかった。圧縮エアーは電気を使ってコンプレッサーで生み出すため、無駄な電力消費に繋がり、ひいてはCO₂が大量に排出され問題となる。昨今の電力逼迫による電気代の高騰や、カーボンニュートラルを実現するためにもエアー漏れを解決する必要があるが、エアー漏れは目に見えないため、その存在を早期に発見し、適切な対策を講じることが困難である。

2. リアルタイムビームフォーミングによるエアー漏れの可視化：

ビームフォーミングは、複数のマイクロフォンセンサーからなり、それぞれが個別に超音波を受信する。エアー漏れからの超音波の到達時間や強度を解析し、エアー漏れの位置を特定する。また、特定した情報をリアルタイムでカメラの映像に反映することで、作業者が瞬時にエアーの漏洩箇所を特定することができる。

3.　最新のエアー漏れ可視化カメラ　LF10

リアルタイムビームフォーミング技術を最大限に活かした製品が、昨年12月にフィンランドメーカーから発売された。マイクロフォンセンサーの個数は業界最大数の124個で、AIによる機械学習により高精度なエアー漏れ検知を実現している。本製品には従来のカメラには無い特徴を3つ紹介する。

3.1　カメラ本体サイズの小型化

従来の機器はタブレット型で、長方形の筐体に画面とマイクが搭載される形式がほとんどだった。「歩きながらエアー漏れの検査を行う」のがエアー漏れ可視化カメラの特性であるが、従来モデルは両手で持って検査を行うため危険が伴うという声が多くあった。そんな中、LF10は業界最大のマイクの搭載数を誇り、業界最高精度の検知精度を実現しているにも関わらず、片手で持てる小型サイズでの製品化を実現した。これにより、作業者の危険や長時間使用による疲労を大幅に軽減することに成功した。

3.2　可視領域と距離入力の自動制御

LF10はAIにより、エアー漏れによって発生する超音波なのか、その他の超音波なのかを分析することができる。騒音環境下での検査時は自動フィルタリングを行い、機械の動作音などを極力表示しない。また、漏洩箇所までの距離を自動で認識することができるため、計測時に必要な難しい操作をすべて自動化している。

3.3　漏出量と損失コストのリアルタイム分析

エアー漏れを解決する目的のほとんどは、「省エネ・省コスト」や「CO₂排出削減」である。エアーの漏洩箇所を特定することも重要だが、改善することによる効果がどれだけあるのかを可視化することが最重要であり、最もユーザーが求める機能だと考える。LF10はエアーの漏洩箇所を計測すると、瞬時に漏洩量(L/min)と予想損失コスト(円/年)が表示される。表示される情報は、コンプレッサーの稼働時間や電力単価など様々な数値を入力して計算するため、実数値に近いものとなっている。

終わりに：

工場のエアー漏れによるCO₂の排出は環境への悪影響を及ぼす重要な問題であるが、LF10を使用することで、エアー漏れを早期に発見し、効果的な対策を講じることができる。また弊社では、低予算での“エアー漏れ診断”も実施しており、数多くの工場でエアー漏れによるお困りごとを解決している。エアー漏れの対策は、持続可能な未来の実現に向けた重要な一歩となるのである。