エア漏れ検知に重要なビームフォーミングとは？

ビームフォーミングは、一般的に信号処理に用いられる技術で、音響カメラでは圧縮空気の漏れや部分放電（PD）など特定の音源を識別するために採用されています。ビームフォーミングの細部は実は複雑ですべてのカメラメーカーが同じようにこの技術を利用しているわけではありません。

この記事では、最先端のデバイスがどのようにビームフォーミングを利用しているか、そのヒントをご紹介します。

ビームフォーミングの概要

ビームフォーミングの基本原理は非常にシンプルで、水中や空中を伝わる音波や機械波や電磁波など、波動として伝わるエネルギーに関連しています。ビームフォーミングでは、信号が四方八方に分散してしまうのを、受信する機器に向けさせるのです。ビームフォーミングは、第一次世界大戦中にフランス軍が航空機の接近を探知するために開発した盗聴装置にすでに導入されており、決して新しい技術ではありません。その後、ビームフォーミングは送信する信号を一方向に集中させ、他の音との関係でその強度を最大にしラジオアンテナ用にさらに改良されました。

音響カメラはその逆で、ある方向から届く音信号を強くし、他の方向からの音（暗騒音とみなされる）を最小にする技術です。Robert Doughertyは、学会論文「What Is Beamforming? (2008)」において、航空音響ビームフォーミングを “音源強度の分布を表す画像を生成するためのマイクアレイデータの処理手法 “と定義しています。

音響カメラで音源を特定するには、カメラのアレイにある異なるマイクに、音波や音信号が少しずつ異なるタイミングで到達することを利用します。音源が固定されている場合、常にカメラに対して特定の角度から音がやってくるため、信号はいずれかのマイクロフォンにかならず到達します。アレイ内の他のマイクには、時間遅れの音声信号が届きます。これらの遅延を計算することで、音源の正確な位置を検知し、決定することができます。

ビームフォーミングはマイクロホンアレイのノイズ耐性を向上させるため、紙パルプ工場での小さな漏れなど、ノイズの多い環境でも静かな音の位置を特定することができます。また、音響カメラに搭載されたビームフォーミングにより、広い範囲や遠くの音源をピンポイントで検出することができます。

カメラの最適化がビームフォーミングの成果を最大化する

リークラボジャパンが発売している音響カメラLF10など、ビームフォーミングの恩恵を最も受けられる音響カメラは、膨大な量の最適化が行われてきました。これにはマイクロホンアレイの形状設計、アレイ内のマイクロホンの適切な数および配置の決定が含まれます。ビームフォーミングの結果を左右するもう一つの重要な要素は、計算の背後にあるソフトウェア、言い換えれば、機器の演算能力です。LF10の場合、カメラの最適化とビームフォーミングのフル活用により、他のカメラメーカーと比較して3つの大きな差別化要因を得ることができました。

ゴースト音源の減少：ゴースト音源とは、ビームフォーミング技術を用いた音響カメラでは表示できるものの、実際には存在しない音源のことです。カメラが最適化されていればいるほど、ゴースト音源の出現は少なくなります。
ヒートマップの解像度の向上：音響カメラは音源の位置をより正確に特定し、その音圧レベルをより正確に計算することができます。
感度の向上：ノイズの多い環境でも、小さな漏れや弱い部分放電など、より微少な音源を検出することができます。

NL Analyticsによる分析レポート

音響カメラがビームフォーミング技術を適用し、音源の位置を正確に特定することに成功した後、分析機能にスポットライトが当てられます。LF10の場合、まずAIが余計な音源をフィルタリングし、検出された音に関する関連データも提供します。圧縮空気の漏れに関しては、漏れの大きさとその費用の見積りが、漏れを修理することが有益であるかどうかなど、最も効率的なメンテナンス計画を決定するための重要な情報です。

LF10のソリューションは、ビームフォーミングに関して最適化された音響カメラであるだけでなく、分析能力においても比類がなく、ユーザーにとって分かりやすいデータとメンテナンスのためのアドバイスを提供します。