潤滑油(潤滑剤)の種類と特徴
先週こんなショックなことがありました。後輩の一人がタービン油を入れる機器用に作動油を買ってきたんです。確かに近いものですが種類は異なります。弊社の業種で言えばエンジンオイルやATFあたりには多少の理解がありますが、それ以外はわからないのも仕方がないかもしれません。ここは愛すべき後輩のためにもわかる限りですが潤滑油(潤滑剤)の種類をまとめておこうと思います。
1.ガソリンエンジンオイル
必要な特性:粘度特性、清浄分散性、酸化安定性、腐食防止性、耐摩耗性、潤滑性、燃焼特性、防錆性、消泡性
最近の動向:環境問題への意識の高まりから省燃費(低粘度化)、ロングライフ化の要求
➡「APIサービス分類、SAE 粘度番号」
2.ディーゼルエンジンオイル
特徴:ディーゼルエンジンの機構上、拡散燃焼になるため、均一燃焼が難しく黒煙や粒状物質(PM)が発生しやすくなります。また、燃焼室内が空気過剰になりやすいためにNOx(窒素酸化物)が発生しやすくなります。
要求性能:清浄性、酸中和性、耐摩耗性、排ガス規制にいかに対応するか
最近の動向:燃焼によって生じるNOx対策の為EGRを装着する事で塩基価の低下を防ぎ、不完全燃焼で生じるエンジンオイルの未燃焼物質も含まれるため蒸気の発生しづらいベースオイルを用いて消費量を減らしたオイルが多くあります。
3.油圧作動油
要求性能:耐摩耗性、防錆性、シール性が必要
種類:鉱油系…R&O型作動油、耐摩耗性作動油
含水系…水グリコール系作動油(難燃性)
W/O乳化型作動油(難燃性)
O/W乳化型作動油(難燃性)
合成系…リン酸エステル系作動油(難燃性)
脂肪酸エステル系作動油(難燃性、生分解性)
最近の動向:油圧タンクが小さい傾向にあり酸化安定性の向上および高引火点、省エネ油が求められる。
4.工作機械専用油
要求特性:軸受け油…低粘度、極圧性、耐摩耗性、消泡性
摺動面油…微速追従型、耐スティックスリップ特性、水溶性切削油との相性
多目的油…多目的に上記のあらゆる性能を兼ね備えていること
必要な特性:高引火点化、水分離性に優れていること
5.圧縮機、真空ポンプ油
種類:往復式、回転式、ターボ型、真空ポンプ
要求特性:酸化安定性、媒体に影響を与えないこと、低い蒸気圧の基油であること(真空ポンプ)、カ ーボンを発生させないこと(往復式)
最近の動向:合成油を使用したロングライフ化
6.タービン油
種類:原子力タービン、ガスタービン、水力タービン等の発電設備、送風機、圧縮機、軸受け
要求特性:長期にわたり安定して使用できること、優れた酸化安定性、防錆性、抗乳化性、消泡性
最近の動向:通常のタービン油はフェノール系酸化防止剤を使用、火力タービン等の高温下での酸化安定性が必要な場合はアミン系酸化防止剤がよい
7.ギヤ油
要求特性:適正な粘度、強固な油膜、耐摩耗性、熱および酸化安定性、腐食防止性、消泡性、水分離性
最近の動向:消防法で250℃以上でも危険物になるのでギヤ油と同等の極圧性能を有しながら多目的であり高引火点化
規格:GL-1、GL-2、GL-3、GL-4、GL-5 数字が高くなるほど保護性が上がる
GL-5…高速で衝撃荷重が加わる厳しい条件で使用されるハイポイドギヤに適する
8.切削油
種類:
水溶性切削油…エマルジョン系
…ソルブル系
…ソリューション系
要求特性:潤滑(水溶性)、耐腐食性、消泡性
油性切削油
要求特性:潤滑(水溶性)、耐腐食性、消泡性、冷却(油性)、潤滑、浸潤
最近の動向:水溶性=耐腐食性の向上と耐乳化破壊性でロングライフ化
油溶性=高引火点(250℃以上)
9.洗浄油
炭化水素系洗浄油
要求特性:低臭性、低毒性、乾燥性
最近の動向:環境問題により塩素系、フロン系の代替として、引火点に要注意
水溶性アルカリ洗剤
要求特性:洗浄性、消泡性
最近の動向:引火点がないため安全だが炭化水素系よりも液寿命が早い
10.グリース
長所:シール効果があるため装置を簡素化できる、潤滑箇所に直接塗れるため保守が容易、低速・高荷重・衝撃荷重に強い
短所:冷却効果がない、混入物をフィルターなどで除去できない
基油による特徴
合成油…長寿命、広い使用温度範囲、生分解性(エステル)
高粘度ベースオイル…離油度の向上
特徴:像ちょう剤と基油と添加剤の組み合わせで特殊な用途に使用が可能。
(例)航空機用グリース=合成油+バリウム
低温から高温まで使用可能で離油しにくいグリースになる
例:リチウムグリース…潤滑性、せん断性、耐水性、耐熱性に優れ欠点が少ない
家電にも使えるが樹脂やゴムには向かない
モリブデングリス…有機モリブデンや二硫化モリブデンによる極圧性と耐圧性
耐水性や耐熱性は低いものが多い
シャーシグリース…耐水性や潤滑性に優れる、安価、シャーシに最適
耐熱性が低く、極圧性が低い
シリコングリース…硬さが安定している、酸化しにくい、低温下で硬くなりにくい
樹脂やゴムにも潤滑性を発揮
11.冷凍機油
種類:合成油…合成炭化水素系(アルキルベンゼン、オレフィン)
エステル、エーテル系(ポリアルキレングリコール)
鉱物油…ナフテン系
要求特性:冷媒フロンとの相性、長期安定性、軸受け、吸水性、電気絶縁性
最近の動向:機器の電動化に伴って電気絶縁性が求められる
形状について
潤滑油といってもすべてが液状というわけではありません。形状からも用途を理解するのに役立ちます
最後に
オイルはたくさんの種類があって面白いですね。ここに掲載していない工業用油もまだまだ種類がありますが、これらは自動車整備に携わる方ならば接する機会があるかと思います。ここからさらにエンジンオイルならAPI分類で要求特性が変わってきますし、ミッションのタイプごとに潤滑特性も変わってきます。当社は輸入カーケミカルにおいて国内No.1カンパニーの自信がございますので油脂類やケミカルでお困りの際はお気軽にお問合せください。