カーエアコン添加剤の種類と未来
カーエアコン
カーエアコン用は自動車部品の中ではニッチな分野で、その添加剤(ケミカル)ともなるとさらにニッチです。しかし、エンジンに添加剤を入れて馬力が上がったりするように、エアコンも添加剤によってより冷たい風が出るようになったり、その効果は様々です。
このコラムでは、そんなエアコン添加剤の種類と未来についてお話したいと思います。
カーエアコン添加剤の種類
カーエアコンの添加剤を考える上で前提となるのが、「必ずコンプレッサーオイルに添加する」ということです。エアコンサイクル内には冷媒ガスとコンプレッサーオイルが循環していますが、既存の冷媒(フロン分子)に添加物は入り込みませんので、自ずと液体であるコンプレッサーオイルに添加することとなります。添加剤とは、液体への混ぜ物です。
①オイル缶(通称)
エアコンからガスが漏れた際に、ガスと一緒にオイルも漏れ出てしまします。そして抜けたガスを補充する「ガスチャージ」作業の中で使うのがオイル缶です。これには、少量のガスとコンプレッサーオイルが含まれていますので、漏れ出たオイルを補填するために使います。そのため、注目すべきはどんな種類のガスとオイルが何グラム入っているかです。冷媒ガスは噴射剤の役割なのでコスパを考える時はオイル量で考えてください。
注意点は、「新車に入れてはいけない 」ということです。オイルやガスを入れすぎることでエアコン内の許容量がオーバーしてしまうと過充填状態になり、逆に性能が悪化します。 製品によくある謳い文句として「冷却力アップ」や「異音除去」や「潤滑アップ」などとありますが、これは「古いエアコンやオイルが漏れたエアコンに対して」という前提があります。つまり、エンハンサー(性能強化)の成分が入っていません。
※新車時をゼロの状態として、走行や年数を重ねてマイナスになった状態をゼロに近づけるためのものです。決して、ゼロの状態からプラスにはなりません。
②蛍光剤入りオイル缶
先ほど紹介したオイル缶に蛍光剤を含んだものです。オイル缶は漏れたオイルの補充に使いますが、蛍光剤入りはさらに漏れ箇所の特定に役立ちます。
漏れたところにガスやオイルを入れても補修しなければまた漏れます。ただし、エアコンから漏れ出るガスとオイルは無色透明で無臭です。しかもガス漏れは目で見えない超小さい隙間によって起こります。
そこで、蛍光剤を入れることによってエアコンサイクル内のオイルが蛍光反応を示すようになり、漏れ箇所を特定することができます。
余談です。カーエアコンが登場したのは1960年代のクラウンですが、その後続々と新型車にカーエアコンが搭載されてきました。その中で整備箇所の特定が難しい問題があり、米国のスペクトロニクス社がその解決策となるカーエアコン用蛍光剤を開発しました。その技術を日本に持ってきたのが当社の創業者で現会長です。未だに熟練の整備士の方から蛍光剤が出てきたときは驚き助かったと言われ、私も尊敬しています。
③性能向上剤(エンハンサー)
オイル缶と似ていますが、こちらは「新車時に使うとプラスの状態になる」のが特徴です。もちろん、マイナスになった性能をゼロに近づけたり、プラスにしたりもできます。端的に性能アップが目的です。どのように性能を上げるかがその商品のポイントになってきますが、基本的には特殊な潤滑剤を配合することで、コンプレッサーのパワーロスを低減し、サイクル内の効率を高める効果があります。他にはエアコンの耐久性の増加や内部の汚れを分散させる効果などメリットがあるので、とりあえず1本入れておくのは私もお勧めしたいです。
注意点としては、性能向上剤はコンプレッサーオイルに混ぜられた状態で製品になっている点です。(そうでないものもあります)入れすぎは過充填の元となりますので、使いすぎには注意してください。年に1回入れるなど論外です。
何の根拠もありませんが、固体潤滑剤はコンプレッサーに対しては上手く潤滑層を形成できなかったり、熱に負けてしまい数週間も効果が持続しないなどと聞いたことがあります。しかし冷静に考えて、エンジン内のピストン摩擦やカムの極圧に耐えられる理屈のある素材であればコンプレッサーに負けないのではないでしょうか。つまり、しっかりと根拠のある製品がいいということです。
経験上よかったのは、新車ならフラーレン配合の製品で、経年車ならRVS粒子が配合された製品です。これに関しては簡単な実験しかしていませんが、おそらく粒子のサイズが金属表面の僅かな凸凹のサイズに上手くマッチするのだと考えています。
あと、面白いのは最近登場したオイルファウリング現象(配管内のオイル溜まり)を解消する添加剤です。これは理に叶っていて好きです。
④漏れ止め剤
その名のとおり、エアコンからの冷媒ガス漏れを止めるためのケミカルです。エアコンの漏れは前述したとおり見つけずらかったり、室内ユニット(エバポレーター)なら蛍光剤を視認することもできません。そこで、漏れ止め剤ならエアコンサイクル全体に対して有効です。
しかし、どの製品でも止められる漏れの限界は「スローリーク」までになります。スローリークとは、何週間か何か月かの長い時間をかけて漏れていく症状です。エアコンの漏は、仮に1mmの穴が空いていれば数日もかからずにシューっと抜けきってしまいますので、そうしたものはスローリークとは呼べませんので部品交換が必要になります。しかし、0.1mm未満のスローリークはエアコンの不具合では最も多い症状ですので、こうした漏れ止めケミカルが役に立つ場面は非常に多いです。
注意すべきなのは、漏れ止め剤の性質です。これはポリマー入りとノンポリマー(ポリマーフリー)の2タイプが市場にあり、絶対的におすすめなのはノンポリマータイプです。ポリマータイプは、大昔からあるタイプの漏れ止め剤ですが、空気中の水分に触れるとシーラント接着剤のように固まる性質を持ちます。漏れ箇所でのみ固まってくれるのならいいですが、エアコン内に空気(水分)が混入していると良きせぬところで固まります。漏れは止まったけれどもコンプレッサーがロックしては元も子もありません。
対してノンポリマータイプは空気中の水分と反応せず、硬化もしません。このタイプは漏れ箇所に発生するわずかな圧力異常や外気温差などに漏れ止め剤が凝集し、かさぶた状の油膜を形成します。詳しくは企業秘密ですが、大気圧と表面張力を上手く利用したケミカルです。
まとめ
カーエアコンの添加剤はそれほど種類が多くはありません。大きく分類してもこれら4つに分けられますので意外と簡単ですね。あとはこれらが、容量違いであったり、容器や注入方法が異なったりしますので、そこで使いやすさが変わります。じゃあこれですべてなのかというとまだまだ世界は広いです。海外ではすでにヒートポンプによる熱移動の効率を上げる添加剤があったり、気体潤滑をエアコンに応用しようとする研究機関があります。
カーエアコンはEV化によってさらに複雑化し、こうしたアフター製品の需要増が見込まれていますので、こうした新しい取り組みをするイノベーターも多く、好奇心が尽きません。おそらく、近い将来には今の市場の倍以上の添加剤が発売されるのではないでしょうか。私もアイデアだけなら10個はありますのでどれか本気でやってみたいです。
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