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カーエアコンの仕組みとトラブル

カーエアコン

現代の車なら必ず搭載されているカーエアコン。しかしこの仕組みについて考えたことのある方は少ないかと思います。車のメンテナンスではエンジンのトラブルやタイヤ交換など様々な問題と直面しますが、エアコンも当然壊れる可能性のある部品です。この記事では基本的なエアコンの仕組みと共に、各部品の一般的なトラブルについて考えていきたいと思います。

この仕組みを理解する上でははずせない図があります。まずはこちらをご覧ください。

はい、こんな図を見せられただけでは何もわかりませんね。一緒にじっくり見ていきましょう。

これは一般的なカーエアコンを現した図なのですが、色のついた線が1本の長い配管を表しています。この1本の配管がコンプレッサー(図左下)からはじまり、各部品をぐるりと経由してさいごにもコンプレッサーに繋がっています。これら一連の流れを冷凍サイクルといい、カーエアコンの場合はこれら部品が車のボンネットの中に納まっています。

フロンガスと聞くと排出規制やオゾン層に関して思い浮かぶ人も多いかと思いますが、まさにそういったガスが過去数十年に渡り使われ続けていました。私も子供の頃には「エアコンをつけると地球温暖化する」とテレビや大人から聞いたもんですが、過去からそういった性質のフロンガスは確かに使われ続けており、度重なる規制によって今では温暖化させないフロンガスも数多く登場しています。実際にはガスがエアコンから漏れ出て大気放出されてはじめて環境汚染になるのですが、基本的にエアコン配管は密閉されていますので、動かすだけで環境に影響はありません。

少し話が脱線しましたが、このフロンガスは別名で「エアコンガス」や「冷媒ガス」や単に「冷媒」とも呼ばれています。この冷媒ガスをエアコン内で液体に圧縮して気化させることにより気化熱(蒸発熱ともいう)を発生させ、冷たい空気の元を作っています。気化熱とは、液体が気体になるときに周囲の熱を吸収することで発生します。最も身近なものでいうと汗がわかりやすいです。発汗後に汗が乾いてくるとひんやりして気持ちがいいですよね。あれも気化熱によるものです。察しの良い人は気づいたかと思いますが、この気化熱(冷たい状態)を作り続けるのがエアコンという装置です。

もう少しエアコンに似たものはないかと考えると、ありました。スプレー缶です。スプレー缶の中には製品の成分だけではなく液体圧縮されたガスが高圧の状態で入っています。(冷媒ではありません)これらはノズルを押すことで、缶の中にある液体ガスが気化し、周りの熱を奪い気化熱が発生します。この仕組みをエアコンの中ではグルグルと繰り返していると考えると面白いです。

エキスパンションバルブ(噴霧器)〇

それではこのスプレーノズルの役割は先ほどの図のどの場所にあたるでしょうか。答えはエアコン図右上のエキスパンションバルブです。(通称エキパン)この部品は圧縮された液状の冷媒ガスを霧状に噴霧させる役割を持つため、その中には弁が入っています。その弁によって噴霧量をコントロールしていますので、上の図における人差し指とノズルがエキスパンションバルブに相当します。部品の見た目としては、高圧配管と低圧配管を接続するためのポケットが2つついているのが特徴です。冷媒ガスは細い方から出ていって、太い方から帰ってきます。

エバポレーター(蒸発器)〇

エバポレーターは、エキスパンションバルブで噴霧された冷媒ガスが気化するための場所です。この部品は、室内ユニットに該当するためカーナビやエアコンコントローラーの奥の方に配置されています。そのため、この部品を交換するためには電装部品の多くを取り外す必要があるため工賃が高くて有名です。見た目はラジエーターやコンデンサーのように無数の回路とフィンが付いた形状をしており、これは霧状態の冷媒が気化しやすいように表面積を増やせるように設計されています。そしてここにブロアファンによって空気が送られ、フィンに触れた空気が気化熱によって熱が奪われて冷たい空気になります。そしてエアダクトを通って室内に届けられるようになっています。

〇コンプレッサー(圧縮機)〇

コンプレッサーはエアコンの心臓部のような部品です。よくエアコンのことを勉強する際には初めに紹介される部品ですが、私はスプレー缶のくだりがわかりやすいと常々感じているのでこの記事では順番を前後させました。

役割としては、エバポレーター内で気化した冷媒ガスを高圧状態に圧縮することです。気体の体積をギュッと凝縮させる感じです。勘違いしている人をよく見かけますが、この時は高温ですがまだ気体の状態です。エバポレーターから来た低圧のガスを圧縮して送りだすので、太い配管(低圧)と細い配管(高圧)が接続されています。また、動力はエンジンベルトから取りますので、エンジンの側面あたりのアルミ配管を探すとわかりやすいです。(ハイブリッド車や電気自動車は異なります)

そして忘れてはならないのがコンプレッサーオイルの存在です。これは別名エアコンオイルとも言いますが、このオイルは冷媒ガスと一緒にエアコンサイクル内をぐるぐると回りながらコンプレッサー摺動部を潤滑しています。

〇コンデンサー(凝縮器)〇

コンプレッサーで高温高圧になった冷媒ガスは次にここで冷やされて液化します。これは冷媒の沸点特性が関係してくるのですが、圧が高い状態でも、温度が熱ければ気体の状態のままです。しかし、圧が高い状態で温度を下げてやれば低温高圧の液体にすることができます。ただし冷たくなるわけではなく、60℃程度であることを覚えておきましょう。
部品の見た目としては、エバポレーターやラジエーターと同じくフィンがたくさんあり、ラジエーターの全面に配置されています。

〇レシーバータンク(分離)/ レシーバードライヤー(乾燥)〇

コンデンサーで液化した冷媒が次にたどり着くのがレシーバータンクです。ここは液冷媒のサブタンクのような役割なのですが、実は気体の冷媒も入ってきます。実際にコンデンサーで冷媒のすべてを液化できるわけではないので、このタンクに貯蔵されながらに冷えた冷媒も液化していきます。英語ではリキッドレシーバーとも言いますが、コチラの方がわかりやすくて共感が持てます。
もう一つ、この部品に含まれるレシーバードライヤーとは乾燥材のことなのですが、これはエアコンサイクル内に侵入してきた水分を捕まえる役割があります。(具体的にはストレーナーで管内を除湿します)エアコン内の水分はエアコンにとって故障の最たる原因ですので非常に理に叶っています。

〇サービスポート(低圧/高圧)

もう一つ、これまでの部品とは毛色が異なりますが、エアコンにはサービスポートというものが配管にくっついています。これはエアコン配管への接続ポートなのですが、ここから冷媒ガスを充填したり、抜き取ったり、配管内圧力を測定することができます。サービスポートは主にコンプレッサー手前に低圧側に一つとコンデンサー後ろの高圧側に一つが付いていることが多いです。(片側しかない車もレアですがあります。)
通常はキャップを閉められており、L(低圧)かH(高圧)と書かれています。

〇おさらい〇

ここまでいかがだったでしょうか。何となくカーエアコンの仕組みはおわかりいただけたかと思います。ここで覚えるためにオススメなのが「今すぐ自分の車のボンネットを開けて各部品がどれかを実際に見てみること」です。カーエアコンはエバポレーター以外はほとんど見える位置にありますので、配管がどのように繋がっているかを目で追ってみるのも面白いと思います。

ここまで部品の名前と役割を紹介してきましたが、それらがどのような不具合や故障を発症するのでしょうか。事故って部品が割れたみたいな話は抜きで、どのようなことが起きるのかを順番に見ていきましょう。

〇エキスパンションバルブの詰まり〇

エキスパンションバルブの摺動部(ピン)は数ミリ程度の開け閉めによるものです。ここにエアコンオイルのスラッジやコンプレッサーから発生した鉄粉や水分などが密集することで詰まることがあります。取り外して洗浄しようにも、室内ユニットなのでとてつもなく面倒な作業が待っています。

エバポレーターの漏れ/異臭〇

エバポレーターは気化熱によってキンキンに冷える部品であり、外気から大量の空気が送り込まれてきます。その手前にはエアコンフィルターが付いていますが、100%のフィルタリングなんて存在しないのが世の中の常です。何年もかけてエバポレーターに蓄積したホコリや菌に加えて、空気中の水分が結露となってこれらホコリを濡らします。夏場にエアコンをかけていると車体の下にポタポタと水たまりができますよね。そしてエアコンを切ればエアコンユニットは外気と当たらず、暖かくなっていき、じめじめとしたカビが繁殖しやすい環境となります。また、この水滴はエバポレーターを腐食させ、わずかな穴が開けばそこから冷媒ガスが漏れます。目に見えない部分はすごいことになっているんです。

〇コンプレッサー(摩耗)〇

コンプレッサーはエアコンの中で最も忙しい部品で、その中身は絶え間なく動き続けています。摩擦を少しでも低減するためにコンプレッサーオイルが使われていますが、いずれは摩耗して圧力不足を起こします。特にコンプレッサーの摺動が悪いと焼き付きが起こり鉄粉が発生します。ただ動かなくなるだけならまだしも、親切にも鉄粉という金属のザラザラをエアコン配管全体に送り届けてから壊れます。(鉄粉量センサーみたいなのがあればいいのに)

この鉄粉が厄介極まりなく、何メートルもある配管やコンデンサーやエバポの細い配管まですべてに回っていますので、酷い焼き付きを起こしたコンプレッサーは新品に取り換えてもまたすぐにぶっ壊れます。各配管や各部品をすべて取り外してガッツリ洗浄するれば改善できるかもしれませんが、夏場に出る汗よりも涙が多く出る作業です。

〇コンデンサー(目詰まり)〇

ここにゴミやホコリが詰まると冷媒の冷却が十分に行えません。そうなるとレシーバータンクから適切な量の液冷媒がエキスパンションバルブに送ることができず冷却能力の低下を招きます。たまには洗車の際にでもしっかりと洗ってみるのも有効です。ただし同じような症状でもクーリングファンの故障ということもあります。

〇レシーバータンク/レシーバードライヤー(目詰まり)〇

この部品は不純物や水分を取り除くためのろ過機能が主な役割になりますので、このフィルターが目詰まりを起こせば冷媒ガスが流れづらくなります。また、ドライヤー(フィルター)は破けることもあります

さいごに

ここまで大まかなエアコンの仕組みをご紹介しましたがいかがだったでしょうか。エアコンの回路を考えるときは、冷媒ガスが各部品でどのような状態であるかをイメージしてみるといいと考えの幅が広がります。当社はカーエアコン整備分野での国内No.1カンパニーですので、各部品の補修方法や修理方法でお困りの際はお気軽にお問合せください。

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